罪の天使-1
最悪な日曜日だった。
おれ、朝霧 圭は彼女の紗枝と買い物に来ていた。目的は紗枝の誕生日プレゼントだ。来週にせまった紗枝の誕生日に、紗枝のお気に入りのブランドのピアスを買ってやるって約束をしてたんだけど、なかなか動かない俺にしびれをきらせて、せがまれて引っ張り出された。
紗枝は美人だ。
前の彼女だって、その前だって、美人だった。
それは俺も、男友達も認めるところだ。
そして彼女たちも俺のことを女友達に自慢していたことも知ってる。
両親は開業医、俺は名門・藤和学園に幼稚園から通い、今は藤和大の医学部生だ。女ウケのいい容姿といい、たしかに恵まれている。
だけど、神様ってやつはやっぱり平等なんだ。
誰も知らない、大きな大きな代償を俺は背負っている。
3歳だったあの日から。
話は日曜にもどる。
紗枝に連れて行かれたジュエリーショップは、今、流行のショップで若い男女であふれていた。紗枝は熱心に自分のピアスを選んで、しきりに「どっちがいい?」なんて聞いてきたけど、俺は俺でケースの中のひとつのネックレスに目を奪われてた。
ピンクゴールドのオープンハートにやはりピンクがかった小ぶりのストーンを配置した、かわいくもシンプルなペンダントトップ。
・・・あいつに似合いそうだ。
「圭ー?なに、そっちのほうがいい??ネックレスにしよっかー。」
「いや、・・・ミヤコに似合いそうだと思ってさ。」
「あぁ、そんなことより・・・」
「あっ、すみません、このネックレスいただけます?」
「はぁ?!」
紗枝の大声に店員は一瞬驚いたようだったけど
「こちらでよろしいでしょうか?お合わせになりますか?」
紗枝に向かって微笑む。
「結構です!あたしのじゃありませんからっ!!」
周りにいた店員も客も一瞬あっけにとられる。
そのまま紗枝は店を出てしまって、あわてて追いかけたけど、紗枝は一言おれをなじって走り去っていった。
「ミヤコミヤコって・・・・おかしいんじゃないの?!シスコンッ!!さようならっ!!」
振られた感想?
・・・あぁ、またそれかよ。
俺のシスコンは年季入りだ。
3つ下の妹の美弥子は、やっぱり幼稚園からずっと藤和学園で、藤和の女子高の2年だ。中学のころからミス藤和の呼び声高い、かわいいかわいい妹。
・・・だけどそれだけだ。
なんでそれを彼女の紗枝からいろいろ言われるんだ?
紗枝だけじゃない。いつもそうだ。
妹と仲いいことがそんなに悪いか?
そのあと、俺がどうしたかといえば、店に引き返して、そのネックレスを買って帰った。
・・・シスコンなのは否定しないさ。
振られたショックなんてみじんもなくて、家につくころには紗枝のことなんてすっかり忘れてた。美弥子の喜ぶ顔が早く見たくて・・・
おれ、朝霧 圭は彼女の紗枝と買い物に来ていた。目的は紗枝の誕生日プレゼントだ。来週にせまった紗枝の誕生日に、紗枝のお気に入りのブランドのピアスを買ってやるって約束をしてたんだけど、なかなか動かない俺にしびれをきらせて、せがまれて引っ張り出された。
紗枝は美人だ。
前の彼女だって、その前だって、美人だった。
それは俺も、男友達も認めるところだ。
そして彼女たちも俺のことを女友達に自慢していたことも知ってる。
両親は開業医、俺は名門・藤和学園に幼稚園から通い、今は藤和大の医学部生だ。女ウケのいい容姿といい、たしかに恵まれている。
だけど、神様ってやつはやっぱり平等なんだ。
誰も知らない、大きな大きな代償を俺は背負っている。
3歳だったあの日から。
話は日曜にもどる。
紗枝に連れて行かれたジュエリーショップは、今、流行のショップで若い男女であふれていた。紗枝は熱心に自分のピアスを選んで、しきりに「どっちがいい?」なんて聞いてきたけど、俺は俺でケースの中のひとつのネックレスに目を奪われてた。
ピンクゴールドのオープンハートにやはりピンクがかった小ぶりのストーンを配置した、かわいくもシンプルなペンダントトップ。
・・・あいつに似合いそうだ。
「圭ー?なに、そっちのほうがいい??ネックレスにしよっかー。」
「いや、・・・ミヤコに似合いそうだと思ってさ。」
「あぁ、そんなことより・・・」
「あっ、すみません、このネックレスいただけます?」
「はぁ?!」
紗枝の大声に店員は一瞬驚いたようだったけど
「こちらでよろしいでしょうか?お合わせになりますか?」
紗枝に向かって微笑む。
「結構です!あたしのじゃありませんからっ!!」
周りにいた店員も客も一瞬あっけにとられる。
そのまま紗枝は店を出てしまって、あわてて追いかけたけど、紗枝は一言おれをなじって走り去っていった。
「ミヤコミヤコって・・・・おかしいんじゃないの?!シスコンッ!!さようならっ!!」
振られた感想?
・・・あぁ、またそれかよ。
俺のシスコンは年季入りだ。
3つ下の妹の美弥子は、やっぱり幼稚園からずっと藤和学園で、藤和の女子高の2年だ。中学のころからミス藤和の呼び声高い、かわいいかわいい妹。
・・・だけどそれだけだ。
なんでそれを彼女の紗枝からいろいろ言われるんだ?
紗枝だけじゃない。いつもそうだ。
妹と仲いいことがそんなに悪いか?
そのあと、俺がどうしたかといえば、店に引き返して、そのネックレスを買って帰った。
・・・シスコンなのは否定しないさ。
振られたショックなんてみじんもなくて、家につくころには紗枝のことなんてすっかり忘れてた。美弥子の喜ぶ顔が早く見たくて・・・
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罪の天使 -2
日曜日の夜,お兄ちゃんはすこぶる機嫌が悪かった。
・・・彼女サンとケンカでもしたのかな。
「ミヤコ,これやるよ」
お兄ちゃんが夕飯の後,あたしに差し出したのは,最近雑誌でもよくとりあげられてる有名なジュエリーショップの袋。どう考えても高校生のあたしには高級すぎるようなお店のもの。
あけると中からピンクゴールドのハートのかわいいネックレスが出てきた。
おもわずニンマリして
「ありがとう~!」
ってお兄ちゃんに抱きついてみた。それだけでお兄ちゃんは満足そうに自分の部屋に帰っていった。・・・やっぱり機嫌ちょっと悪そうかも。いつもならもっとうれしそうにするのに。
お兄ちゃんはあたしにめちゃくちゃ甘くて,弱い。それはお父さん以上かも。
だからこーゆーいかにも「恋人用」みたいなプレゼントをもらうこともそんなにめずらしいことじゃなかった。
あたしにしても,お兄ちゃんはやっぱり自慢のアニキで,3高っていうのかな,容姿も,学歴も,将来もある人だと思う。
・・・兄妹じゃなかったら?うーん,憧れてたかも。それは認めるよ,お兄ちゃん。
翌日のお昼休み。
委員会とかなんとかで教室を抜けてたアヤがあわてて駆け寄ってくる。
「みーや!」
「?アヤ・・・なに?」
「ちょっとー。すっごい噂になってるよ!」
「えぇ?なにが?」
「文学部の紗枝センパイ,わかるでしょ?」
「わかるもなにも,うちのお兄ちゃんのイマカノじゃん・・・・」
「別れたんだって!!」
「へっ?!」
紗枝センパイといえば,すごい美人で,学園でも有名だった。たしか中等部からの外部組で,そのころからうちのお兄ちゃんに夢中だったって話を聞いたことがある。でも実際に付き合いだしたのは半年くらい前からで,・・・・でも,昨日だってデートって言ってたし。
「紗枝センパイってさ,美人だけどけっこう性格もキツイって話じゃん?委員会の先輩の中で,紗枝センパイと親しい人がいて,すごい細かくしゃべってたからさ・・・」
「・・・・」
なんとなくそこでお互い沈黙。
「ミーヤのせいで別れた、って・・・」
その日以来,なんとなく学園であたしが噂の的になっているのは感じた。そうじゃなくてもお兄ちゃんは目立つ。何人かの女の人とつきあってきたのは知ってたし,あまり続かなくて,別れちゃうのも気づいてた。でも,女のプライドなのかなんなのか,あまりその理由を漏れ聞くことはなかった。
それがなんであたしのせい???
その理由はすぐにあたしにもわかった。紗枝センパイとバッタリ鉢合わせたからだ。
「あら・・・朝霧さん」
それまで紗枝先輩と話したこともあんまりなかったのに,声をかけられる。目がコワイ。
「・・・なんでしょうか?」
「お兄様はお元気?」
「・・・はい」
「ネックレスはいただいたかしら?」
「・・・?どうしてそれを・・・?」
なんで紗枝先輩がそれを知ってるの?そんなあたしの反応をみて,紗枝先輩の顔がいっそうけわしくなる。
「圭ってばあんなに素敵なのに,もったいないわね!今時シスコンなんてはやらないのよ?それとも,もうそんなレベルとっくに超えてるんじゃない?!あぁ,気持ち悪いっ!そんな男とつきあってたなんて一生の恥ね」
「ちょっ・・・何言ってるんですかっ?!あたしと兄は仲はいいけど,普通の兄妹です!」
「へぇ・・・あなたがそう思ってても圭の方はどうだか・・・。ねぇ」
意味ありげにニヤニヤ笑って一緒にいた友達を見る。その人もやっぱりニヤニヤして,こっちを見てる。
「・・・あたし,授業がありますので」
いたたまれなくなって走り出した。
まさか,実の兄貴の彼女とトラブるなんて考えもしなかったよ。
「ちょっと,お兄ちゃん!!」
その日の夜。お兄ちゃんの部屋に押しかける。
「ん?なに?」
読んでた本からちらっと顔を上げる。・・・満面の笑顔だし。そんなんだから誤解されちゃうんだよ!
「今日,紗枝先輩に絡まれた」
「はぁ?紗枝?なんで?」
「・・・お兄ちゃん別れたんでしょ」
「うん」
「・・・うわさになってる」
「へぇ?女子部で?まぁ紗枝も女子部出身だし,大学も同じ敷地だし・・・でもなんで紗枝と直接話したんだ?」
どうもお兄ちゃんはウワサなんて何も知らないらしい。医学部はちょっと別世界だから無理もないけど・・・
「シスコンって。シスコンだから別れたって。」
「・・・へぇ」
「あたしとお兄ちゃんがデキてるって」
「・・・ふん」
「もうっ!!あたしが学校にいずらいのっ!どんな別れ方したらそうなっちゃうのよ!!!」
「・・・」
「お兄ちゃん?・・・なっ!!」
突然立ち上がったお兄ちゃんがあたしの腕をつかんで抱きしめた。
「ちょっ・・・ごまかさないでよ!!やだってば」
「ごまかしてなんかない」
「質問にこたえてよ・・・・っ!!」
「答えるも何も,そのまんまだよ」
「はぁっ?!」
一瞬,抱きしめた腕をさらにつよめて,そのあとお兄ちゃんはあたしを部屋の外においだした。
「おやすみ」
「えっ・・・ちょっとっ!!」
バタン・・・
なに??なんなの???
めちゃくちゃムカつくんですけどっ!!!
隣の自分の部屋に戻ってから,お兄ちゃんの部屋の壁にむかって思いっきりクッションをなげつけてやった。
『そのまんま』・・・?
シスコンだから別れた?
・・・あたしのせいで別れた・・・・?
なにいってるんだか・・・。
チラッと見た姿身のなかの自分の顔が赤かった。
・・・彼女サンとケンカでもしたのかな。
「ミヤコ,これやるよ」
お兄ちゃんが夕飯の後,あたしに差し出したのは,最近雑誌でもよくとりあげられてる有名なジュエリーショップの袋。どう考えても高校生のあたしには高級すぎるようなお店のもの。
あけると中からピンクゴールドのハートのかわいいネックレスが出てきた。
おもわずニンマリして
「ありがとう~!」
ってお兄ちゃんに抱きついてみた。それだけでお兄ちゃんは満足そうに自分の部屋に帰っていった。・・・やっぱり機嫌ちょっと悪そうかも。いつもならもっとうれしそうにするのに。
お兄ちゃんはあたしにめちゃくちゃ甘くて,弱い。それはお父さん以上かも。
だからこーゆーいかにも「恋人用」みたいなプレゼントをもらうこともそんなにめずらしいことじゃなかった。
あたしにしても,お兄ちゃんはやっぱり自慢のアニキで,3高っていうのかな,容姿も,学歴も,将来もある人だと思う。
・・・兄妹じゃなかったら?うーん,憧れてたかも。それは認めるよ,お兄ちゃん。
翌日のお昼休み。
委員会とかなんとかで教室を抜けてたアヤがあわてて駆け寄ってくる。
「みーや!」
「?アヤ・・・なに?」
「ちょっとー。すっごい噂になってるよ!」
「えぇ?なにが?」
「文学部の紗枝センパイ,わかるでしょ?」
「わかるもなにも,うちのお兄ちゃんのイマカノじゃん・・・・」
「別れたんだって!!」
「へっ?!」
紗枝センパイといえば,すごい美人で,学園でも有名だった。たしか中等部からの外部組で,そのころからうちのお兄ちゃんに夢中だったって話を聞いたことがある。でも実際に付き合いだしたのは半年くらい前からで,・・・・でも,昨日だってデートって言ってたし。
「紗枝センパイってさ,美人だけどけっこう性格もキツイって話じゃん?委員会の先輩の中で,紗枝センパイと親しい人がいて,すごい細かくしゃべってたからさ・・・」
「・・・・」
なんとなくそこでお互い沈黙。
「ミーヤのせいで別れた、って・・・」
その日以来,なんとなく学園であたしが噂の的になっているのは感じた。そうじゃなくてもお兄ちゃんは目立つ。何人かの女の人とつきあってきたのは知ってたし,あまり続かなくて,別れちゃうのも気づいてた。でも,女のプライドなのかなんなのか,あまりその理由を漏れ聞くことはなかった。
それがなんであたしのせい???
その理由はすぐにあたしにもわかった。紗枝センパイとバッタリ鉢合わせたからだ。
「あら・・・朝霧さん」
それまで紗枝先輩と話したこともあんまりなかったのに,声をかけられる。目がコワイ。
「・・・なんでしょうか?」
「お兄様はお元気?」
「・・・はい」
「ネックレスはいただいたかしら?」
「・・・?どうしてそれを・・・?」
なんで紗枝先輩がそれを知ってるの?そんなあたしの反応をみて,紗枝先輩の顔がいっそうけわしくなる。
「圭ってばあんなに素敵なのに,もったいないわね!今時シスコンなんてはやらないのよ?それとも,もうそんなレベルとっくに超えてるんじゃない?!あぁ,気持ち悪いっ!そんな男とつきあってたなんて一生の恥ね」
「ちょっ・・・何言ってるんですかっ?!あたしと兄は仲はいいけど,普通の兄妹です!」
「へぇ・・・あなたがそう思ってても圭の方はどうだか・・・。ねぇ」
意味ありげにニヤニヤ笑って一緒にいた友達を見る。その人もやっぱりニヤニヤして,こっちを見てる。
「・・・あたし,授業がありますので」
いたたまれなくなって走り出した。
まさか,実の兄貴の彼女とトラブるなんて考えもしなかったよ。
「ちょっと,お兄ちゃん!!」
その日の夜。お兄ちゃんの部屋に押しかける。
「ん?なに?」
読んでた本からちらっと顔を上げる。・・・満面の笑顔だし。そんなんだから誤解されちゃうんだよ!
「今日,紗枝先輩に絡まれた」
「はぁ?紗枝?なんで?」
「・・・お兄ちゃん別れたんでしょ」
「うん」
「・・・うわさになってる」
「へぇ?女子部で?まぁ紗枝も女子部出身だし,大学も同じ敷地だし・・・でもなんで紗枝と直接話したんだ?」
どうもお兄ちゃんはウワサなんて何も知らないらしい。医学部はちょっと別世界だから無理もないけど・・・
「シスコンって。シスコンだから別れたって。」
「・・・へぇ」
「あたしとお兄ちゃんがデキてるって」
「・・・ふん」
「もうっ!!あたしが学校にいずらいのっ!どんな別れ方したらそうなっちゃうのよ!!!」
「・・・」
「お兄ちゃん?・・・なっ!!」
突然立ち上がったお兄ちゃんがあたしの腕をつかんで抱きしめた。
「ちょっ・・・ごまかさないでよ!!やだってば」
「ごまかしてなんかない」
「質問にこたえてよ・・・・っ!!」
「答えるも何も,そのまんまだよ」
「はぁっ?!」
一瞬,抱きしめた腕をさらにつよめて,そのあとお兄ちゃんはあたしを部屋の外においだした。
「おやすみ」
「えっ・・・ちょっとっ!!」
バタン・・・
なに??なんなの???
めちゃくちゃムカつくんですけどっ!!!
隣の自分の部屋に戻ってから,お兄ちゃんの部屋の壁にむかって思いっきりクッションをなげつけてやった。
『そのまんま』・・・?
シスコンだから別れた?
・・・あたしのせいで別れた・・・・?
なにいってるんだか・・・。
チラッと見た姿身のなかの自分の顔が赤かった。
罪の天使 -3
本当は,俺と美弥子のこと,俺と紗枝のことが学園でウワサになってることくらい知っていた。たしかに医学部は雰囲気も違うし建物も少し離れてはいるけど,持ち上がり組の多いこの学園だ,ウワサなんていくらでも聞こえてくる。まして俺は当人なんだから,なおさら。
今までシスコンって理由で振られたのは3回だ。でも前の二人はさっさと次の男見つけてきてから振られたって感じで,取り立ててウワサになったりはしなかった。というより,俺がシスコンなんてのはある程度はみんなわかってることだし。でも今回のは紗枝の脚色付だ。
「医学部の朝霧は女子部の妹とデキてる」
はっ・・・アホらしい。そんなこと吹聴した紗枝も,おもしろがってウワサしてるやつらも。
「今日,紗枝先輩にからまれた」
あれにはまいった。俺は美弥子のことで何を言われても別にかまわないんだ。だけど美弥子は・・・・美弥子は『普通』なんだから。医学部の俺の耳に入るんだ,どうして高等部の,しかも女子部の美弥子の耳に入らないことがある?どうして・・・どうして,それを美弥子が嫌がらない道理がある?
美弥子はまだごちゃごちゃ言ってたけど,そんなのは耳に入らなくて,思わず抱きしめてた。やわらかい,やわらかい美弥子のカラダ。眩暈がするようだった。
これ以上,理性を抑えるのはムリだ。
慌てて美弥子を廊下に追い出して,部屋に閉じこもる。
・・・美弥子に俺の気持ちはバレただろうか?
・・・軽蔑される?
もう何もかもどうでもよかった。
いつからだろう,美弥子を女として意識したのは。一人の夜に頭に浮かぶのが美弥子だけになったのは。それでもここまで耐えたのは,家族のためでもあったし,美弥子を守るためでもあったけど,なにより自分のためだったかもしれない。
「くっ・・・」
俺自身が熱く自己主張していた。
美弥子を抱きしめた腕の感覚がまだリアルにのこっている。
「ミヤコ・・・ううぅっ・・」
一人の吐精は虚しい。男なら誰だってそう思うだろ。
でも,他の女を相手にするよりずっとマシなんだ。
この壁のむこうに,美弥子はいる。
それはあまりにも残酷なことだ。
美弥子を抱きたい。
今までシスコンって理由で振られたのは3回だ。でも前の二人はさっさと次の男見つけてきてから振られたって感じで,取り立ててウワサになったりはしなかった。というより,俺がシスコンなんてのはある程度はみんなわかってることだし。でも今回のは紗枝の脚色付だ。
「医学部の朝霧は女子部の妹とデキてる」
はっ・・・アホらしい。そんなこと吹聴した紗枝も,おもしろがってウワサしてるやつらも。
「今日,紗枝先輩にからまれた」
あれにはまいった。俺は美弥子のことで何を言われても別にかまわないんだ。だけど美弥子は・・・・美弥子は『普通』なんだから。医学部の俺の耳に入るんだ,どうして高等部の,しかも女子部の美弥子の耳に入らないことがある?どうして・・・どうして,それを美弥子が嫌がらない道理がある?
美弥子はまだごちゃごちゃ言ってたけど,そんなのは耳に入らなくて,思わず抱きしめてた。やわらかい,やわらかい美弥子のカラダ。眩暈がするようだった。
これ以上,理性を抑えるのはムリだ。
慌てて美弥子を廊下に追い出して,部屋に閉じこもる。
・・・美弥子に俺の気持ちはバレただろうか?
・・・軽蔑される?
もう何もかもどうでもよかった。
いつからだろう,美弥子を女として意識したのは。一人の夜に頭に浮かぶのが美弥子だけになったのは。それでもここまで耐えたのは,家族のためでもあったし,美弥子を守るためでもあったけど,なにより自分のためだったかもしれない。
「くっ・・・」
俺自身が熱く自己主張していた。
美弥子を抱きしめた腕の感覚がまだリアルにのこっている。
「ミヤコ・・・ううぅっ・・」
一人の吐精は虚しい。男なら誰だってそう思うだろ。
でも,他の女を相手にするよりずっとマシなんだ。
この壁のむこうに,美弥子はいる。
それはあまりにも残酷なことだ。
美弥子を抱きたい。
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