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罪の天使 -2

日曜日の夜,お兄ちゃんはすこぶる機嫌が悪かった。

・・・彼女サンとケンカでもしたのかな。

「ミヤコ,これやるよ」
お兄ちゃんが夕飯の後,あたしに差し出したのは,最近雑誌でもよくとりあげられてる有名なジュエリーショップの袋。どう考えても高校生のあたしには高級すぎるようなお店のもの。
あけると中からピンクゴールドのハートのかわいいネックレスが出てきた。

おもわずニンマリして
「ありがとう~!」
ってお兄ちゃんに抱きついてみた。それだけでお兄ちゃんは満足そうに自分の部屋に帰っていった。・・・やっぱり機嫌ちょっと悪そうかも。いつもならもっとうれしそうにするのに。

お兄ちゃんはあたしにめちゃくちゃ甘くて,弱い。それはお父さん以上かも。
だからこーゆーいかにも「恋人用」みたいなプレゼントをもらうこともそんなにめずらしいことじゃなかった。

あたしにしても,お兄ちゃんはやっぱり自慢のアニキで,3高っていうのかな,容姿も,学歴も,将来もある人だと思う。
・・・兄妹じゃなかったら?うーん,憧れてたかも。それは認めるよ,お兄ちゃん。


翌日のお昼休み。
委員会とかなんとかで教室を抜けてたアヤがあわてて駆け寄ってくる。

「みーや!」
「?アヤ・・・なに?」
「ちょっとー。すっごい噂になってるよ!」
「えぇ?なにが?」
「文学部の紗枝センパイ,わかるでしょ?」
「わかるもなにも,うちのお兄ちゃんのイマカノじゃん・・・・」
「別れたんだって!!」
「へっ?!」

紗枝センパイといえば,すごい美人で,学園でも有名だった。たしか中等部からの外部組で,そのころからうちのお兄ちゃんに夢中だったって話を聞いたことがある。でも実際に付き合いだしたのは半年くらい前からで,・・・・でも,昨日だってデートって言ってたし。

「紗枝センパイってさ,美人だけどけっこう性格もキツイって話じゃん?委員会の先輩の中で,紗枝センパイと親しい人がいて,すごい細かくしゃべってたからさ・・・」
「・・・・」
なんとなくそこでお互い沈黙。

「ミーヤのせいで別れた、って・・・」

その日以来,なんとなく学園であたしが噂の的になっているのは感じた。そうじゃなくてもお兄ちゃんは目立つ。何人かの女の人とつきあってきたのは知ってたし,あまり続かなくて,別れちゃうのも気づいてた。でも,女のプライドなのかなんなのか,あまりその理由を漏れ聞くことはなかった。

それがなんであたしのせい???

その理由はすぐにあたしにもわかった。紗枝センパイとバッタリ鉢合わせたからだ。

「あら・・・朝霧さん」
それまで紗枝先輩と話したこともあんまりなかったのに,声をかけられる。目がコワイ。
「・・・なんでしょうか?」
「お兄様はお元気?」
「・・・はい」
「ネックレスはいただいたかしら?」
「・・・?どうしてそれを・・・?」

なんで紗枝先輩がそれを知ってるの?そんなあたしの反応をみて,紗枝先輩の顔がいっそうけわしくなる。

「圭ってばあんなに素敵なのに,もったいないわね!今時シスコンなんてはやらないのよ?それとも,もうそんなレベルとっくに超えてるんじゃない?!あぁ,気持ち悪いっ!そんな男とつきあってたなんて一生の恥ね」
「ちょっ・・・何言ってるんですかっ?!あたしと兄は仲はいいけど,普通の兄妹です!」
「へぇ・・・あなたがそう思ってても圭の方はどうだか・・・。ねぇ」
意味ありげにニヤニヤ笑って一緒にいた友達を見る。その人もやっぱりニヤニヤして,こっちを見てる。

「・・・あたし,授業がありますので」

いたたまれなくなって走り出した。

まさか,実の兄貴の彼女とトラブるなんて考えもしなかったよ。


「ちょっと,お兄ちゃん!!」
その日の夜。お兄ちゃんの部屋に押しかける。
「ん?なに?」
読んでた本からちらっと顔を上げる。・・・満面の笑顔だし。そんなんだから誤解されちゃうんだよ!
「今日,紗枝先輩に絡まれた」
「はぁ?紗枝?なんで?」
「・・・お兄ちゃん別れたんでしょ」
「うん」
「・・・うわさになってる」
「へぇ?女子部で?まぁ紗枝も女子部出身だし,大学も同じ敷地だし・・・でもなんで紗枝と直接話したんだ?」

どうもお兄ちゃんはウワサなんて何も知らないらしい。医学部はちょっと別世界だから無理もないけど・・・

「シスコンって。シスコンだから別れたって。」
「・・・へぇ」
「あたしとお兄ちゃんがデキてるって」
「・・・ふん」
「もうっ!!あたしが学校にいずらいのっ!どんな別れ方したらそうなっちゃうのよ!!!」
「・・・」
「お兄ちゃん?・・・なっ!!」

突然立ち上がったお兄ちゃんがあたしの腕をつかんで抱きしめた。

「ちょっ・・・ごまかさないでよ!!やだってば」
「ごまかしてなんかない」
「質問にこたえてよ・・・・っ!!」
「答えるも何も,そのまんまだよ」
「はぁっ?!」
一瞬,抱きしめた腕をさらにつよめて,そのあとお兄ちゃんはあたしを部屋の外においだした。
「おやすみ」
「えっ・・・ちょっとっ!!」

バタン・・・

なに??なんなの???
めちゃくちゃムカつくんですけどっ!!!

隣の自分の部屋に戻ってから,お兄ちゃんの部屋の壁にむかって思いっきりクッションをなげつけてやった。

『そのまんま』・・・?
シスコンだから別れた?
・・・あたしのせいで別れた・・・・?

なにいってるんだか・・・。

チラッと見た姿身のなかの自分の顔が赤かった。
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