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罪の天使 -3

本当は,俺と美弥子のこと,俺と紗枝のことが学園でウワサになってることくらい知っていた。たしかに医学部は雰囲気も違うし建物も少し離れてはいるけど,持ち上がり組の多いこの学園だ,ウワサなんていくらでも聞こえてくる。まして俺は当人なんだから,なおさら。

今までシスコンって理由で振られたのは3回だ。でも前の二人はさっさと次の男見つけてきてから振られたって感じで,取り立ててウワサになったりはしなかった。というより,俺がシスコンなんてのはある程度はみんなわかってることだし。でも今回のは紗枝の脚色付だ。

「医学部の朝霧は女子部の妹とデキてる」

はっ・・・アホらしい。そんなこと吹聴した紗枝も,おもしろがってウワサしてるやつらも。


「今日,紗枝先輩にからまれた」
あれにはまいった。俺は美弥子のことで何を言われても別にかまわないんだ。だけど美弥子は・・・・美弥子は『普通』なんだから。医学部の俺の耳に入るんだ,どうして高等部の,しかも女子部の美弥子の耳に入らないことがある?どうして・・・どうして,それを美弥子が嫌がらない道理がある?

美弥子はまだごちゃごちゃ言ってたけど,そんなのは耳に入らなくて,思わず抱きしめてた。やわらかい,やわらかい美弥子のカラダ。眩暈がするようだった。

これ以上,理性を抑えるのはムリだ。

慌てて美弥子を廊下に追い出して,部屋に閉じこもる。


・・・美弥子に俺の気持ちはバレただろうか?

・・・軽蔑される?

もう何もかもどうでもよかった。
いつからだろう,美弥子を女として意識したのは。一人の夜に頭に浮かぶのが美弥子だけになったのは。それでもここまで耐えたのは,家族のためでもあったし,美弥子を守るためでもあったけど,なにより自分のためだったかもしれない。

「くっ・・・」
俺自身が熱く自己主張していた。
美弥子を抱きしめた腕の感覚がまだリアルにのこっている。

「ミヤコ・・・ううぅっ・・」

一人の吐精は虚しい。男なら誰だってそう思うだろ。
でも,他の女を相手にするよりずっとマシなんだ。

この壁のむこうに,美弥子はいる。
それはあまりにも残酷なことだ。

美弥子を抱きたい。

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