and u -4
翌朝、もう全身がなんだかだるかった。昨日はそのまま疲れて寝付いちゃったけど、目が覚めると一気に昨日のことが現実的な問題として押し寄せてくる。
「なづ、おはよー」
正門を過ぎたあたりでアヤに声をかけられる。アヤ・・・霧島 亜矢は幼稚園時代からの仲良しで、まぁそーゆー友達はこの学園の場合めずらしくないんだけど、彼女はれっきとした『お嬢様』だ。霧島財閥の令嬢・・・だけど本人にはそんな気取ったところがぜんぜんなくて、ご両親もけっこう普通の感覚を持ち合わせてる人たちで、あたしみたいなフツーの家庭の子とあんまり変わりがない、付き合いやすい友達。
「なづな、昨日の美術課題はまにあったのー?久谷怒ってた?」
「えっ・・・怒ってない・・・と思う・・・」
「あははっ!!たしかに、久谷が怒るとかありえないよね!怒っても笑ってもあの冷たい顔で『はい』とか言って受け取っちゃう感じするもんねー。あの男には表情や感情がないのかしらねぇ。」
「う・・・うん」
表情や感情がない・・・?
あたしもそう思ってた。思ってたけど。
アヤはそこまでしゃべってあたしがおかしいことに気づいたらしい。
「なづな?どした?元気なくない??」
「え・・・やっ、そんなことないよ!元気元気!ちょっと考え事しててさー。そうだ、それより今日、ガッコ終わったら買い物いこーよ。狙ってるキャミあるんだぁ」
「考え事って・・・なづはたまにぼけっとしてるからなぁ・・・。よし、じゃぁ買い物いこう!!」
一瞬、アヤに昨日のことを全部話しちゃおうかと思った。・・・でもなんて?久谷におそわれて「奴隷にならないか」って言われた、って?どうしよう、って?・・・『どうしよう』???どうしようって、どんな選択肢があるっていうの?
・・・奴隷になるか、ならないか?
あはは・・・・
あたしは・・・自分がおかしくなったんじゃないかとマジで思った。
迷うまでもない、無視だ、ムシ!なかったことにしよ・・・だって奴隷ってなによ。しかも奴隷じゃなくったって、教師よ?教師じゃなくったって、あの久谷だよ?うん、ありえない!・・・ありえない。
「なづー・・・百面相」
「へっ・・・?」
アヤが苦笑いしてた。あたしもね、苦笑いだよ、自分に。
それから4日ほどは、平和だった。
たまに久谷のことも思い出したけど、夢のような気もしてきて。そもそも美術室っていうのはあまり人通りのない芸術棟(中高生の芸術の授業は同じ別棟で受けるのだ)の廊下の一番奥にあって、授業じゃなきゃ行く人なんてめったにいない。久谷は高等部で担任をもってるわけでもないから高校棟で会うこともない。てか、中高とおして久谷が担任やったなんて聞いたことないけど。
でもね、あたりまえだけど、美術の授業は毎週やってくる。
美術の授業の朝。
あたしの心臓はもう壊れてしまうかっていうくらいばくばくしてた。
「なづ、顔色わるいよ?」
その日何人目かのつっこみに笑顔でこたえながら、美術室で久谷の登場を待ってた。
ガラッ・・・
久谷だ。
一瞬目があう。誰もきづかないくらいだったけど、うすく笑った・・・ように見えた。
そのあと、簡単な説明と連絡を聞いていつもどおり課題製作にそれぞれとりかかる。久谷は怒らないから、みんな近くの子とおしゃべりしながらの騒がしい作業だ。久谷は黙って巡回しながら、たまにここはこの色のほうが、とか、この構図は、なんてアドバイスをする。
「旭、ここはもっと明るい方がいい」
あたしへのアドバイス。
「・・・はい」
ねぇ・・・どうしてドキドキするんだろう。
あんなにひどいこと言われたのに。
どうして久谷はそんなに余裕なの?
どうしてあたしはこんなに切ないんだろう。
去り際、久谷の指先が作品の上のあたしの指をかすめていく。
意志をもった動きだってことは、あたしにもわかった。
「欲求不満な顔」
アヤがあたしに言った言葉だ。
鋭い。もし本当に顔にココロが書いてあるなら。
あたしの顔には
「ヨッキュウフマン」
そう書いてあるのだろう。
「クタニ ガ ホシイ」
とも。
「なづ、おはよー」
正門を過ぎたあたりでアヤに声をかけられる。アヤ・・・霧島 亜矢は幼稚園時代からの仲良しで、まぁそーゆー友達はこの学園の場合めずらしくないんだけど、彼女はれっきとした『お嬢様』だ。霧島財閥の令嬢・・・だけど本人にはそんな気取ったところがぜんぜんなくて、ご両親もけっこう普通の感覚を持ち合わせてる人たちで、あたしみたいなフツーの家庭の子とあんまり変わりがない、付き合いやすい友達。
「なづな、昨日の美術課題はまにあったのー?久谷怒ってた?」
「えっ・・・怒ってない・・・と思う・・・」
「あははっ!!たしかに、久谷が怒るとかありえないよね!怒っても笑ってもあの冷たい顔で『はい』とか言って受け取っちゃう感じするもんねー。あの男には表情や感情がないのかしらねぇ。」
「う・・・うん」
表情や感情がない・・・?
あたしもそう思ってた。思ってたけど。
アヤはそこまでしゃべってあたしがおかしいことに気づいたらしい。
「なづな?どした?元気なくない??」
「え・・・やっ、そんなことないよ!元気元気!ちょっと考え事しててさー。そうだ、それより今日、ガッコ終わったら買い物いこーよ。狙ってるキャミあるんだぁ」
「考え事って・・・なづはたまにぼけっとしてるからなぁ・・・。よし、じゃぁ買い物いこう!!」
一瞬、アヤに昨日のことを全部話しちゃおうかと思った。・・・でもなんて?久谷におそわれて「奴隷にならないか」って言われた、って?どうしよう、って?・・・『どうしよう』???どうしようって、どんな選択肢があるっていうの?
・・・奴隷になるか、ならないか?
あはは・・・・
あたしは・・・自分がおかしくなったんじゃないかとマジで思った。
迷うまでもない、無視だ、ムシ!なかったことにしよ・・・だって奴隷ってなによ。しかも奴隷じゃなくったって、教師よ?教師じゃなくったって、あの久谷だよ?うん、ありえない!・・・ありえない。
「なづー・・・百面相」
「へっ・・・?」
アヤが苦笑いしてた。あたしもね、苦笑いだよ、自分に。
それから4日ほどは、平和だった。
たまに久谷のことも思い出したけど、夢のような気もしてきて。そもそも美術室っていうのはあまり人通りのない芸術棟(中高生の芸術の授業は同じ別棟で受けるのだ)の廊下の一番奥にあって、授業じゃなきゃ行く人なんてめったにいない。久谷は高等部で担任をもってるわけでもないから高校棟で会うこともない。てか、中高とおして久谷が担任やったなんて聞いたことないけど。
でもね、あたりまえだけど、美術の授業は毎週やってくる。
美術の授業の朝。
あたしの心臓はもう壊れてしまうかっていうくらいばくばくしてた。
「なづ、顔色わるいよ?」
その日何人目かのつっこみに笑顔でこたえながら、美術室で久谷の登場を待ってた。
ガラッ・・・
久谷だ。
一瞬目があう。誰もきづかないくらいだったけど、うすく笑った・・・ように見えた。
そのあと、簡単な説明と連絡を聞いていつもどおり課題製作にそれぞれとりかかる。久谷は怒らないから、みんな近くの子とおしゃべりしながらの騒がしい作業だ。久谷は黙って巡回しながら、たまにここはこの色のほうが、とか、この構図は、なんてアドバイスをする。
「旭、ここはもっと明るい方がいい」
あたしへのアドバイス。
「・・・はい」
ねぇ・・・どうしてドキドキするんだろう。
あんなにひどいこと言われたのに。
どうして久谷はそんなに余裕なの?
どうしてあたしはこんなに切ないんだろう。
去り際、久谷の指先が作品の上のあたしの指をかすめていく。
意志をもった動きだってことは、あたしにもわかった。
「欲求不満な顔」
アヤがあたしに言った言葉だ。
鋭い。もし本当に顔にココロが書いてあるなら。
あたしの顔には
「ヨッキュウフマン」
そう書いてあるのだろう。
「クタニ ガ ホシイ」
とも。
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